光受容体CarHの構造解析によるビタミンB12の新規機能の解明

村木 則文
(自然科学研究機構分子科学研究所 生命錯体分子科学研究領域 特任助教)

2014年11月17日月曜日

結晶学会の感想です

11月初めに日本結晶学会年会に参加しました。
今回、東大のホールを会場にするため、3連休まるまる使って開催されました。
(平日は講義などで使うため、借りられないのだと思います)
結晶学会は久しぶりで、この学会でしか会わない知人もいるので、再会を楽しみました。

結晶学会は化学系・物理系・生物系と分かれていて、
生物系はタンパク質の結晶構造解析に関する発表が大半を占めます。

個々の発表は専門的になるので省きますが、
最近の結晶学(生物系)の動向がよくわかったので、
そのあたりを少し書きます。


やはり、タンパク質は鉱物に比べて、柔らかくて、軽くて、弱いです。
あたりまえですが、いつも大きな問題として私たちの前に立ちはだかります。

1. 結晶にならない

2. エックス線で損傷する

3. タンパク質は本来動いている(結晶の中では動けない)


1
非常によくある話で、私も悩まされています。
今回、助成を受けている研究対象のタンパク質もなかなか結晶化しません・・・
最近では、天然変性という概念が盛んに議論されています。
タンパク質は折り畳まれた “決まった構造” をとっていると思われていたのですが、ふらふらと特定の構造をとっていないタンパク質が多数報告されています(天然変性状態)。
これらは、一定の条件下で "決まった構造" をとることで、機能を発揮します。
(普段は変性状態をとることで、スイッチがオフの状態にある)
ある程度しっかりした構造をとらないと結晶にはならないので、このようなタンパク質の結晶化は非常に難しいです。結晶構造解析以外の実験手法を組み合わせることも多いようです。一部分の構造を基に、理論計算で全体構造を予測した研究も発表されていました。

2
構造解析用のデータを得るには、1個の結晶から数枚〜数百枚の回折写真を収集します。
エックス線を当てることになるので、結晶は毎回損傷を受けます。つまり、X線結晶構造解析で得られた構造は、少なからず損傷を受けた後の構造と言えます。いかに損傷を軽減するかという工夫もありますが、全く異なる手法で解決する方法が出てきました。
X線自由電子レーザーSACLAです。
SACLAは2011年に完成した、できたてほやほやの実験施設ですが、早くも研究成果が出ています。原理を一言で書くのは難しいのですが、非常に強力で非常に細いビームを短時間だけ照射することで損傷を回避しています。

3
タンパク質は柔らかくて、動きのある分子です。
結晶にすると溶液中とは異なり、大きく動くことができません。
動く過程をコマ撮りするように結晶をつくることもあるのですが、
動きを止めて結晶化できた例は決して多くはありません。
最近は他の実験手法と組み合わせることで解決しています。
(電子顕微鏡のように、結晶構造解析に比べると分解能(解像度)は低いが、より天然に近い状態で観察できる実験手法があります)
共同研究って大事です!


まとめ
今年、「ありのままの〜」という歌が流行りましたが、
生物の体内のありのままの構造にどこまで近づけるか!というのが
結晶学(生物系)の重要課題となっています。

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